ヘイト街宣賛同者による池袋駅西口暴行事件について

ヘイト街宣賛同者による池袋駅西口暴行事件について

2017年7月26日
Anti-Racism Project(ARP)

 2017年7月9日(日)18時過ぎの池袋駅西口で、これまで数多くのヘイトスピーチ(差別扇動)を繰り返し、ハーケンクロイツを掲げるデモも主催してきた、「護国志士の会(※1)」の街宣終了後、その賛同者、もしくは参加者により、アイスコーヒーをかけられる暴行事件が発生しました。事件を起こした当人は、その場で現行犯逮捕され、池袋署に連行されています。

 このヘイトスピーチ街宣の参加者及び賛同者は、彼らに反対する人々を常に「朝鮮人」認定し、差別デマやヘイトスピーチを街頭やネット上で繰り返し喧伝してきました。

 昨年施行された「ヘイトスピーチ解消法」は、街頭でヘイトスピーチを繰り返す彼らを問題視し、国会で作られた法律です。そして街頭などでヘイトスピーチに反対する人々は多様であり、その多数は日本人でもあります。ヘイトスピーチを繰り返す人々は、こうした事実から目を背け続けています。

 この時のヘイトスピーチ街宣に参加した1人は、アイスコーヒーをかけた加害者が連行された後も、「朝鮮人がー」と被害者に向かって繰り返し叫んでいました。まさに悪夢としか言えない光景です。被害を受けた人物は日本人ですが、これは実質的に朝鮮人を対象にしたヘイト・クライム(差別犯罪)であると言えるのではないでしょうか(※2)。

 2016年6月3日にヘイトスピーチ解消法が施行されましたが、ヘイトスピーチを「自粛」したのは、ほんの一時期だけで、現在も解消法の施行以前とほぼ変わらないヘイトスピーチ・デモや街頭宣伝を繰り返し行っています。2017年6月11日(日)には、浦和駅前でハーケンクロイツも掲げられました。この街宣の主催者(※3)は、川崎市でヘイトスピーチが行われる場合の公的施設利用に関するパブリックコメント(※4)に対する意見の中で、「我々は、現在、ヘイトスピーチは行っているのか?」と書き、その回答として「『ヘイトスピーチ規制法』の制定以降に、我々がヘイト的発言をしたというのは、私が知る限りでは無いと思っています。」としている事(※5) に呆れると同時に怒りを覚えます。

 そもそもこの一文の中の「我々」とは誰かという事もありますが、この団体含め、他の団体も先日の都議選の最中も、ヘイトスピーチは引き続き行われています(※6)。先日の7月16日(日)に、川崎市で行われた無告知デモも、明確に差別扇動を企図したものでした(※7)。主催者は、この1年前にデモの途中で中止した川崎デモについて、ヘイトスピーチ・デモではない(※8)としていますが、明らかにヘイトスピーチ・デモでと言えるものでした(※9)。そして先日の差別扇動を企図した川崎ヘイトデモに参加した半数近くが、その後の秋葉原(御徒町)での極めて悪質なヘイトスピーチ・デモにも参加しています。

 ヘイトスピーチを行っている人権侵害の加害者が、自らの偏見と妄想による差別行為を改めず、反省もせず、「表現の自由」の名の元に、今後も差別とヘイトスピーチを繰り返す事は決して許されません。

 未だにハーケンクロイツを掲げて街頭宣伝を行い、ヘイトスピーチ解消法施行後は、ヘイトスピーチをしていないという誤った認識を持ち、差別を差別と認めず、執拗にヘイトスピーチ・デモ、ヘイトスピーチ街宣を、今も繰り返し繰り返し行い続ける人々に対して、私たちは、そして日本の社会は何をしなければならないのでしょうか。

 2016年6月3日以降に、関東圏で行われたヘイトスピーチ・デモは20件以上、ヘイトスピーチ街宣は80件以上を数えます。最近では、無告知のヘイトスピーチ街宣も増えています。先日行われた都議選のアンケートでは、自民党を除く他の諸党派すべてが、ヘイトスピーチを規制する条例の制定に前向きな回答をしています(※10)。

 今なお繰り返し行われ続けている、ヘイトスピーチ・デモ、ヘイトスピーチ街宣を止めるために、なくすために、国会では新たな法律を、都道府県、市区町村では、差別及びヘイトスピーチを撤廃するための条例を制定する必要があります。

 条例に加え、更なる啓発、教育・相談体制の整備と、インターネット上のヘイトスピーチ対策も不可欠です。そして、ヘイトスピーチを伴うデモや街頭宣伝が行われる場合には、行政及び行政の長(知事、市区町村長など)や議員が率先して、ヘイトスピーチを許さないというメッセージの発信も大切(必須)です。

 日本政府や自治体による朝鮮学校への「無償化」除外などの差別政策(※11)や、過去に日本が行った植民地支配や侵略を否定する行為も、差別の扇動、ヘイトスピーチ、ヘイト・クライムと明確に結びついているので、こちらも是正していかなければなりません。

 ヘイトスピーチを放置すれば、ヘイト・クライム(差別犯罪)に繋がります。遡れば、1923年の関東大震災における朝鮮人・中国人に対する虐殺事件、最近では2017年5月に起きた、朝鮮系の銀行への放火未遂事件があります(※12)。前述の「護国志士の会」で「突撃隊長」と呼ばれた(元)メンバーによる傷害事件も、2014年に起きています(※13)。

 ヘイトスピーチによる深刻な被害は救済されないまま、今もなお続いています。一日も一刻も早い、差別を撤廃する、ヘイトスピーチを規制する新たな法律、条例の制定が必要です。

 差別とヘイトスピーチをなくすために、皆さま1人1人(特にマジョリティ当事者である日本人) のご理解とご協力を何卒宜しくお願い致します。

(※1)会の代表は、2012年6月3日、新宿駅東南口で男性の顔面を殴打(https://www.youtube.com/watch?v=z1eLBCgEhy8 2分25秒~)。2014年に池袋と南越谷でナチス・ドイツのハーケンクロイツを掲げた「異民族排斥」等のデモを主催。2017年6月にも代表が、浦和駅東口でハーケンクロイツを掲示。

(※2)徳島県教組襲撃事件判決 原告組合・声明 2016.4.25 https://goo.gl/7mgBXR

(※3)牢人新聞社の渡邊昇。2017年4月2日、有田芳生議員へのテロを仄めかす発言。

(※4)「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律に基づく「公の施設」利用許可に関するガイドライン(案)」に関する意見募集 http://www.city.kawasaki.jp/templates/pubcom/250/0000088441.html

(※5)渡邊昇(牢人新聞社)のブログ http://blog.livedoor.jp/surouninn_garyou/archives/55626714.html

(※6)〈時代の正体〉政治活動を隠れみのにする日本第一党 差別扇動者の話法(下) 神奈川新聞 http://www.kanaloco.jp/article/252337
ARP https://antiracismproject.wordpress.com/category/review/(2016年6月3日以降の[記録]を参照)

(※7)〈時代の正体〉川崎でヘイトデモ実行 県警、抗議の市民排除 http://www.kanaloco.jp/article/264879 / 〈時代の正体〉川崎ヘイトデモの人権被害拡大 ネット動画で差別扇動 http://www.kanaloco.jp/article/265476 神奈川新聞

(※8)瀬戸弘幸(日本第一党顧問)のブログ http://blog.livedoor.jp/the_radical_right/archives/53240086.html

(※9)【閲覧注意】 2016年6月5日(日)、 川崎ヘイト(差別扇動)デモのプラカード https://antiracismproject.wordpress.com/2016/06/12/0605/

(※10)2017年6月27日 東京新聞 https://twitter.com/tokyohotweb/status/879466862102200320

(※11)(社説)朝鮮学校訴訟 無償化の原点に戻れ 2017年7月21日 朝日新聞 http://www.asahi.com/articles/DA3S13047050.html

(※12)日本人の男、朝鮮総連銀行に放火未遂…「韓国に悪いイメージ」 2017年5月24日 中央日報 http://japanese.joins.com/article/394/229394.html

(※13)ヘイトスピーチ「失うものばかり」後悔の元「突撃隊長」 2017年6月2日 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20170603/k00/00m/040/024000c