【閲覧注意】
『クローズアップ現代 ヘイトスピーチを問う ~戦後70年 いま何が~』 NHK 2015年1月13日(火)放送
http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3598_all.html
「団体が特権だと主張している特別永住権について、法務省は歴史的経緯などを考慮して、認められた在留資格で、特権ではないとしています。
また生活保護の優遇について、厚生労働省は、国籍を問わず、同じ判断基準で支給をするかどうか決めていて、優遇の事実はないとしています。」
『在特会の言う「在日特権」あるの? 記者がお答えします』 朝日新聞 2014年11月18日
http://www.asahi.com/articles/ASGCF7JC1GCFPTIL02M.html
“法務省入国管理局の担当者に聞くと、「特権とは思っていません」”
“「特権」ではなく、「歴史的な経緯と日本での定着性を踏まえた配慮」”
“厚生労働省保護課の担当者は「生活保護の制度上、国籍で受給を判断することはありません」と否定”
『貧困と生活保護(45) 在日外国人は保護を受けやすいという「デマ」』 読売新聞 2016年12月22日
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20161221-OYTET50036/
「デマ、あるいは妄想としか言うほかありません。日本人でも外国人でも、生活保護を受ける要件や給付の基準は同じで、特別扱いなど、ありません。」
「この判決の後、外国人への生活保護は憲法違反だからやめろと主張している人たちがいます。判決について誤解を招くような報道があったことも一因ですが、判決の内容を全く取り違えた主張です。最高裁は外国人の保護を否定したわけではなく、通知に基づく行政措置によって事実上の保護の対象となりうることは認めています。」
【フライヤー】
「特別永住資格」を「特権」というウソ -「在日特権」というデマ (両面) ver.3
https://antiracismproject.files.wordpress.com/2015/06/dema_sp_v3.pdf (PDF)
2014年10月20日、主に在日コリアン(朝鮮人)をターゲットにしたヘイトスピーチ(差別煽動表現)・ヘイトクライム(差別犯罪)を街頭やネット上で行ってきた「在特会(在日特権を許さない市民の会)」会長と大阪の橋下徹市長が、「意見交換」と呼ばれるものを開きました。翌日、橋下市長は会見で、「「特別永住」の「特別」というものは無くして」「時代とともにそういう特別扱いっていうものは逆に差別を生む」と発言しています。「彼らのロジックではなく」と弁明していますが、これは「特別永住は「在日特権」だ、廃止すべき」という在特会の「主張」と結論としてはほぼ同じものになっています。
「特別永住資格」の「特別」は、歴史的経緯によるものであり、それは「資格」であって「特権」と言えるものではありません。
◆「特別永住」の「特別」って何?
外国人の入国・出国を管理する、「入管令(出入国管理令・現在の入管法)」ができたのは、敗戦後の1951年、日本の主権が回復(サンフランシスコ講和条約の発効)する前年です。
入管令は「外国から入国し、出国する外国人」を対象としたもので、「外国政府が発行した旅券(パスポート)を持ち、在外公館で査証(ピザ)が交付されて入国した外国人」を前提にしています。しかし戦後の日本には、こうした前提に当てはまらない「外国人」が存在しました。それが戦前から日本にいる在日朝鮮人・在日台湾人です。戦前の朝鮮半島や台湾は、大日本帝国により植民地支配された「日本領土」であり、朝鮮人・台湾人は「帝国臣民」とされていました。
戦前から日本にいて、戦後も引き続き日本に留まり「日本国籍」を持ち「日本国民」としての権利を有する旧植民地出身者に対し、日本政府は「参政権停止」や「外国人登録令」を出して、その権利を徐々に奪っていく差別的な政策を実施していきます。
そして1952年、サンフランシスコ講和条約発効に伴う1つの政府通達により、在日朝鮮人・在日台湾人は日本国籍を「喪失」します。国籍を選択する余地なく失って(奪われて)しまったのです。西ドイツやフランスでは旧植民地出身者が自ら国籍を選択する事ができました。
日本国籍を「喪失」したこれらの人々は、入管令で「外国人」として規定する「外国から外国人として入国した人々」には当てはまりません。その人々の法的地位を定めるため、特別な法律・制度が必要だったのです。
そして「とりあえず」制定されたのが通称「法126」です。終戦時に日本にいて、戦後もそのまま日本に留まり続けた在日朝鮮人・在日台湾人と、この法126の施行までに日本で生まれたその子どもは、入管令が定める在留資格なしに日本に在留できる、というものでした。これは「別に法律の定めるところによりその者の在留資格及び在留期聞が決定されるまでの間」と書かれている、あくまで「間に合わせ」のものでした。「在留資格のない」とても不安定な法的地位であるのと、この法施行後に生まれた子どもや孫など対象に含まれなかった人々は、更に不安定な状態を強いられる事となります。
その後、韓国との「協定永住」、難民条約の批准による「特例永住」を経て(※注)、1991年に成立したのが「入管特例法(日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法)」です。ここで「特別永住者」とされたのは、法126の対象者とその子孫で在留期間の定めもありません。1952年に「別に法律に定めるところにより」としてから、成立まで40年近くも先送りされました。
「特別永住」の「特別』とは、「旧植民地出身の元日本国籍者で戦後も引き続き日本に定住している人とその子孫」を対象にしたものであり、「一般の外国人とは歴史的な経緯や事情が異なるため、別の扱いカ匂蕗要とされる」ということです。
一般の永住資格と比べて特段に安定しているというわけでもなく、退去強制の条件は緩和されていますが、外国に行く際は「再入国許可」を受ける必要があり、場合によっては再入国ができなくなることもあります。こうした制限は出入国の権利を制限するものとして、国連の自由権規約委員会からも改善を求められています。
在特会の差別目的からくる「在日特権」発言は、荒唐無稽なもので全くもって論外です。橋下氏の「『特別永住』の『特別』というものは無くして」という発言も、これまでの歴史的経緯と現状の一部しか見ていないもので暴論と言えます。それに橋下市長が対象としているのは、「在日韓国人」に限定されており、それ以外の在日朝鮮人の存在を無視するものです。また「時代とともにそういう特別扱いっていうものは逆に差別を生む」という発言も問題でしょう。「差別されるのはあいつらが特別扱い・優遇されているからだ」というのは、在特会に限らず、ネットなどでも見られるものですが、これは差別を容認・正当化しようとする際の常套句です。「特別扱いはよくないからやめるべき」というような主張は、ヘイトスピーチで、はありませんが在特会が行っている差別目的の「在日特権」発言と同根のように思えます。
特別永住や他の永住・定住資格は、これからも地域や社会で一緒に暮らしていくためにも、不安定ではない制度へと変えていく事を、共に考えていくべきではないでしょうか。
(※注)ここでは簡潔に記しましたが、特別永住資格ができるまでの在日朝鮮人の法的地位の変遷の経緯は、かなり複雑です。より詳しくは以下の本やサイトをご参照ください。
【参考】
[Book] 『在日朝鮮人ってどんなひと?』 徐京植[著] 平凡社 http://www.heibonsha.co.jp/book/b162734.html
[Book] 『在日外国人 第三版 -法の壁、心の壁』 田中宏[著] 岩波新書 https://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn1305/sin_k712.html
[web] 在日コリアンKEYワード:戦後在日コリアン法的地位一覧 http://www.key-j.org/keyword/keywords/houtekitii.html
[Web] 在日コリアンFAQ http://wiki.livedoor.jp/koreanfaq/
・特別永住資格とはどういうものですか?
http://wiki.livedoor.jp/koreanfaq/d/%c6%c3%ca%cc%b1%ca%bd%bb
・「在特会」への反論その2 どうして『特別永住資格』が特権なの?
http://wiki.livedoor.jp/koreanfaq/d/%a1%d6%ba%df%c6%c3%b2%f1%a1%d7%a4%d8%a4%ce%c8%bf%cf%c0%a4%bd%a4%ce2
[Web] 【SYNODOS】特別永住資格は「在日特権」か?/金明秀 / 計量社会学 http://synodos.jp/politics/11245
[Web] 在日韓国・朝鮮人の戦後史―「特別永住資格」の歴史的経緯とは 田中宏×鄭栄桓×荻上チキ http://synodos.jp/society/13054